2022.7.1
前回好評だった、YBSエレメンタリーの授業を紹介。今回紹介するのはアートクラスです。
日本の図画工作の教科書と指導要領をベースに行われているYBSエレメンタリーのアートクラスですが、アプローチ方法や生み出される作品はとても個性にあふれています。子どもたちの発想力や表現力を引き出し、クリエイティブを育てるYBSエレメンタリーのアートクラス。
クラスを担当されているAki先生にインタビューしました。
愛知教育大学(小学校教諭養成課程美術科)卒業と共に小学校、中学校、高校の教員免許状を取得し、同大学院(芸術専攻)に進みましたが、アルバイトで入ったデザイン会社で素質を認められ、23歳でカーデザインの世界に入りました。
以来、国内自動車メーカーのデザイン部署に所属し、計15年に渡る海外駐在(北米、欧州、中国の現地デザインスタジオ)でのデザイン開発プロジェクトに携わり、数多くの車を世に送り出してきました。
デザイナーとしてのキャリアの最後としては、北京の精華大学など、中国の有名大学における現地カーデザイン教育にも貢献し、昨年3月に定年を迎え、私の37年に渡る激動のカーデザイナー人生が幕を下ろしました。
定年退職後は、何をするかは決めていなかったのですが、5年間の海外駐在で、アメリカのミシガンとカリフォルニアで息子と娘の二人の帰国子女を育てた親として、グローバルな「ものづくり」からグローバルな「人づくり」に軸足を移し、新たなチャレンジが出来るのではと思い立ちました。
それまで一度も行使したことの無い大学卒業時に交付された教職免状も、新たなキャリアに何か役にたつかな?後回しにしていた教育の道が再度開かれるかな?と、新しいキャリアを探していたところ、YBSで教職の機会に恵まれました。現在はキンダー及び1年生から6年生まで、すべての子どもにアートを教えています。
様々なスタイルで絵を描く経験を楽しんでもらうことはもちろんですが、紙の皿、段ボール、粘土などを使った面白い立体や、ストローや紐などを使って簡単に動く作品を作っています。キンダーの子どもから6年生までが、楽しい発見があって達成感を味わえて「もっともっとやりたい」と思ってもらえるようなアート活動を考えています。
また、YBS全体のハロウィン、クリスマス会、スポーツデー、音楽発表会などのイベントの際には、各担任の先生と連携を図りながら、アート活動を子どもたちと行ってきました。
ちょうど今は「YBS夏祭り」に向けて、マーブリングの手法で作った紙を貼る『うちわ作り』や、オリジナルデザインの『はっぴ作り』など、夏祭りのムードを盛り上げているところです。
みんな小さい頃は絵を描くことが好きだったはずですが、大きくなるにつれて「私は絵がうまくないから、苦手だから、描くのが恥ずかしいから」など、苦手意識を抱きがちですよね。「スキルが無いとか、センスが無いとか、何を描いたらいいのかわからない」という声をよく聞きます 。
私がYBSでアートクラスを担当した当初、自由闊達なYBSの子どもたちでも、そのような苦手意識に囚われはじめている子どもたちもいました。「音楽」は、音を楽しむことである、と良く言われますが、アートにおいても「見たこともないことを自ら作り出す楽しさ、音楽にあやかって創楽!」ととらえて、子どもたちに十分楽しんでもらいたいと思いました。
キンダーから6年生まで、様々な文化的背景とスキル・センスをもった子どもたちが集まるYBSですので、制作のハードルを出来るだけ低くした教材ネタの仕込みに注力しています。ですが、作品の出来上がりについては『驚愕の出来!』と驚かれるようなものになるよう、十分な事前準備をしてます。
私や他の先生方が「今回はちょっと(スキル、テクニック的に)ハードル高めで、この子たちにはチャレンジングかなー」と予想していたアート活動にも関わらず、子どもたちがそのハードルを遥かに超えていく瞬間です。
私はアート活動を通して、子どもたちに驚きを与えようとしていますが、逆に私たちが驚きをもらうことが毎回のようにあります。これは楽しいですよね。
出来上がった作品は廊下などにディスプレーするのですが、下校時に迎えに来たお父さんお母さんに「これ、私が作ったんだよ!」と子どもたちが鼻高々で自慢しているのを見るのも、微笑ましい瞬間です。
まずは「アートは楽しい!」とワクワクしてほしいですね。そして自分の「目」と「手」と「頭」のつながりを太くして、自らの創造性を活性化していってほしいです。
アート自体は「美」を中心とした教科ですが、サイエンスや数学、ロジックなどにもそれぞれの「美」が有り、それらの教科とも親和性が高いと考えています。
実際、私は絵画から入ってインダストリアルデザインの世界に入り、グローバルな実業ビジネスの世界でキャリアを重ねることになったのですが、そこにはいつもアート的美意識の視点がありました。
子どもたちにも、アート活動を通して「計画性や全体を包括し解決策に導くこと(デザイン的な視点)」なども学んでもらいたいなと考えています。
それから、『常識の殻を破る』ですね。西洋と東洋が交わった“交差点”にあるYBSの場で、子どもたちの無限の可能性を大きく広げていってもらいたいです。
*色々な色がぱあって広がってきれいだったよ! びっくりした!
(ニュートンの生徒、マーブリングのクラスにて)
*ちょうちょの羽根がはパタパタしてすごい!お母さんに自慢するよ!
(コロンブスの生徒、パタパタちょうちょのクラスにて)
*ロボットの手が動くモデル、アキ先生がはじめに見せてくれた時はびっくりして、難しいんじゃないかと思ったけど、わたしにもできたよ! 何度も調整してベストの答えを見つけたよ! わたしってすごい!
(ノーベルの生徒、ロボットハンドのクラスにて)
*お庭の桜が私の上にフワフワしてたの、たのしいの
(ニュートンの生徒、桜の屋外スケッチ会にて)
*音符が踊っているんだよ!ぼくもピアニカで音楽するよ、たのしみだなあ!
(コロンブスの生徒、音楽会用のディスプレー制作にて)
*日本の昔のカッコイイデザインを私なりにデザインしたよ。かっこいい私!夏祭りではきめるよ!
(ライトの生徒、はっぴつくりにて)
YBSでは、言語学習だけではなく、さまざまな活動を通して、子どもたちの無限の可能性を広げていますね。特に、アートクラスは、子どもたちのクリエイティブさを育てる活動となっていて、子どもたちもとても楽しんでいるようです。
子どもたちの教育に熱いパッションを持った、個性あふれた先生たちに出会えるのも、YBSの魅力の1つでしょう。
この記事を書いた人
高梨はるな
大学卒業後、オーストラリアに渡り海外生活を経験し、オーストラリア人の人生を楽しむ国民性に影響を受ける。帰国後、会社員を経て、自由で自分らしい働き方を実現するため、フリーランスでライター・動画クリエイターとして活動。受け取り手に寄り添い、共感性を大切に発信している。